ゴールデンサークル理論から読み解く、WEBマーケティングでの“伝え方”
公開日:2023年8月16日
「人は何を(what)ではなく、なぜ(why)に心を動かされる」
ゴールデンサークル理論の解説の解説とWEBマーケティングへの活かし方についてご紹介していきます。愛されるブランドづくりにも役立つ考え方です。ぜひご一読ください。
目次
マーケティングに活かせる、ゴールデンサークル理論
ゴールデンサークル理論は経営者だけでなく、部下のいる責任者、マーケティング担当者など知っておくべき考え方です。この理論を活用することで、企業の商品やサービスの伝え方、新商品や新サービスの利用を顧客に促したい、身近なところでは、部下にアクションを起こしてほしい、など他者に行動を促したいという時に非常にインパクトのある効果を生み出すからです。
ゴールデンサークル理論とはマーケティングコンサルタントであるサイモン・シネック(Simon Sinek)氏がTEDで話した「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」の中で提唱した理論です。
TEDとは世界の様々な分野の第一線で活躍する人物を講師として招き、定期的にカンファレンスを開催しています。各界の最前線で活躍する実業家や研究者、アーティストが世代や国境を超えて講演しています。
ゴールデンサークル理論とは
ではゴールデンサークル理論とは具体的にどういった理論なのでしょう。詳しく解説していきます。
サイモン・シネック氏によると、優れたリーダーや組織は、一般の人のやり方とは全く異なり、ある共通する思考方法・行動パターンがあると言います。
それを示したのが
- Why なぜ
- How どうやって
- What 何を
サークルの中から外側へ向かって「Why なぜ」→「Howどうやって」→「What 何を」の順で伝えると共感を生み、アクションにつながるとしています。
ゴールデンサークル理論のポイント…人は「何か」ではなく「なぜ」で動く
人が意思決定を行う時、最終的に重要になるのが感情や直感的な感覚だというのがサイモン・シネック氏の考え方のポイントです。どんな人でも自分が「what 何を」、「How どうやって」するのかは理解しています。しかし「Why なぜ」やるのか理解している人は少ないものです。自分や企業の信念に当たる部分です。
「なぜやるのか」について、それは利益を得るためという人もいるでしょう。しかしサイモン・シネック氏は、利益はなぜの答えではなく、単に「結果」に過ぎないと言います。
多くの人や企業は、「What」「How」の部分を主張しがちです。ゴールデンサークルの外側から伝え、中心の「Why なぜ」を伝えていません。
「Whyなぜ」から始めよう
Appleやキング牧師、ライト兄弟がなぜ成功したのか、この動画では彼らの共通点が紹介されています。Appleを例に説明していきます。よくあるケースはWhatから始めますが、成功しているケースはWhyから始めています。
よくあるケース
円の外側からスタートします。What→How→Whyという順番です。
- What
- すばらしいスペックのコンピューターが誕生しました。いかがでしょう。
- How
- 美しいデザインで簡単に使え、ユーザーフレンドリーな製品です。
- Why
- …。
Appleのケース
- What
- 我々のすることはすべて世界を変えるという信念で行っています。違う考え方に価値があると信じています。
- How
- 私たちが世界を変える手段は美しくデザインされ、簡単に使え、親しみやすい製品です。
- Why
- こうしてすばらしいコンピューターが誕生しました。
情報を伝える順番を逆にすることで、伝わり方がグッと変わります。人がアクションを起こすのは「何を」ではなく「なぜ」のストーリーの部分が重要なのです。
生物学的にも理にかなっている
ゴールデンサークル理論は、実は生物学的にも理にかなった考え方です。ポイントは大脳の仕組みにあります。
大脳の仕組み
大脳は大きく分けると、「大脳新皮質」「大脳辺縁系」「脳幹」という3つの構造から構成されていて、それぞれに役割があります。ゴールデンサークル理論で注目したいのは「大脳新皮質」と「大脳辺縁系」です。
- 大脳新皮質…合理的・分析的思考と言語を司る→「What 何を」
- 大脳辺縁系…感情・信頼・忠誠心を司る→「Whyなぜ」「How どうやって」
外から(大脳新皮質)からのコミュニケーションでは、機能やメリット・事実といった大量で複雑な情報は理解できますが、行動に繋がりません。「良さはわかるんだけど…」頭では理解できるけれど、一歩が出ないというケースです。
一方、中から(大脳辺縁系)からのコミュニケーションであれば、行動を制御する脳からアプローチするので理由付けは一旦保留にでき直感的な決定がくだせます。「なぜかわからないけどすんない腑に落ちる」という感覚で、即アクションに移るというケースです。
つまり、人は何を(what)ではなく、なぜ(why)に心を動かされるのです。
例えばマーケティングであれば、商品を必要としている人に売るのではなく、自分が信じるものを信じてくれる人に売ることを目指すということ、採用の現場であれば、仕事を求めている人を雇うのではなく、自分の信念を信じてくれる人を雇うことを目指すということです。
「なぜ」が重要である理由
ではなぜ自分の信念を信じてくれるひとを惹きつけることが重要なのでしょうか。特にマスマーケットを例にするとわかりやすいでしょう。 ヒントは「イノベーション普及の法則」にあります。
「イノベーション普及の法則」
アメリカの社会学者エベレット・M・ロジャースが1962年に提唱した理論で、革新的な商品やサービスが市場に登場する際、その普及率が16%を超えるとシェアが爆発的に拡大すると解きます。市場の成長に伴って普及率は高まりますが、普及のどの段階の層なのかによって顧客層全体を以下の5つの層に分けます。
イノベーター(革新者) | 人口の2.5% |
アーリーアダプター(初期採用者) | 人口の13.5% |
アーリーマジョリティ(前期追随者) | 人口の34% |
レイトマジョリティ(後期追随者) | 人口の34% |
ラガード(遅滞者) | 人口の16% |
さらに、マーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーアはイノベーターとアーリーアダプターを初期市場、アーリーマジョリティからラガードをメインストリーム市場として、この2つの市場の間には「キャズム」と呼ばれる深い溝があり、この溝を越えることが市場開拓に置いて重要だとする「キャズム理論」を提唱しました。
イノベーターとアーリーアダプターは自らの直感で決める人たちです。直感的な感情で行動を起こします。商品やサービスを普及させたいならば、まずは直感的な感情でアクションを起こす人たちに訴えること重要だということです。「Why なぜ」という信念・価値観の部分で共鳴すれば、どんな商品・サービスを発売しても買う熱狂的な支持者が生まれます。
まとめ
「人は、何を(what)ではなく、なぜ(why)に心を動かされる」
動画の中でも何度もこのフレーズを口にしています。
人に何かを伝えたいときの伝える順番を工夫するだけで、伝わり方がこうも変わるのであれば活用しない手はありません。商品やサービスの良さを、ユーザーに伝えたい!と商品のスペック・良さを説明するのではなく、その背後にある自社のストーリーをいかに魅力的に伝えられるか。なぜ自社がそのビジネスに取り組んでいるのか、信念・価値観を大いに語ってください。そして、そのビジネスが相手にとってどんな幸せをもたらすのか。
自社のWEBサイトのコーポレートページで理念・価値観を伝えられていますか。そのビジョンが商品やサービスづくりに生かされていますか。ユーザーを突き動かす世界観がきっと自社にあるはずです。その世界観を表現し伝えることが大切です。
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