金融機関DX事例に感じる違和感 ―ツール業者に振り回されないために

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9uarter株式会社 代表取締役 Webマーケティングコンサルタント
九澤 悠

デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せ、地方銀行や信用金庫もその対応を求められています。しかし、実際の現場では、ただ単にツールを導入すれば解決するわけではありません。多くの先行事例や成功ストーリーが語られる中で、これらの事例は多くの場合、大手の金融機関やデジタルツールベンダーによって主導されたものです。

これらの事例、たとえば、八十二銀行や北海道銀行のような大手の成功事例が注目されがちです。しかし、地方銀行や信用金庫が直面するリソースの制約や、地域密着型の営業スタイルには対応しきれていないことが多いのではないでしょうか。単に高価なツールを導入するだけでは、地方銀行の持つ本質的な強みである「リレーションバンキング」や「地域とのつながり」を損なうリスクすらあります。

「限られたリソースの中で、どうすれば現実的かつ効果的なデジタル化を進められるのか?」

これが今、地方銀行の経営企画部長やデジタル推進担当者が抱えている真の悩みではないでしょうか。例えば、地銀のDX推進や信用金庫サイトのデジタル化においても、単なるツール導入以上に、地域密着の価値をどう維持・強化するかが問われています。本記事では、そうした現実的な課題に焦点を当て、単なるツールベースのDXではなく、地方銀行が抱えるリソースや課題に即した現実的なデジタル化戦略について提案します。

1. 限られたリソースで進めるDX推進 ― 実現可能な小規模施策から始める

地方銀行や信用金庫が直面する最大の課題のひとつは、リソースの制約です。大手銀行や地銀64行のように潤沢な予算や専門チームを持たない中で、どうデジタル化を進めるかが重要です。ここでは、地方銀行のDXに即した、導入可能な小規模なDX施策として以下の施策があげられます。

小規模施策の事例

  • CRM(顧客関係管理システム)活用
  • 信用金庫WEBの活用
  • チャットボットの活用
  • オンライン予約システム など

地方銀行のデジタル化を進めながらも、顧客満足度を向上させることが可能です。

2. 他行の成功事例から学ぶ ― 地方銀行向けの現実的なDX戦略

多くの地方銀行のDX事例や金融機関のDX事例が示すように、他銀行の成功事例を参考にすることは有効です。しかし、これらの事例の多くは大手の銀行に焦点を当てているため、地方銀行や信用金庫には当てはまらないこともあります。そこで、地銀のDX推進において実現可能な事例を紹介します。

たとえば、信用金庫のDX事例としては、地域の中小企業との連携や、顧客のフィードバックを基にした信用金庫のデジタル化の成功例などがあります。また、八十二銀行や北海道銀行のような事例も参照しつつ、地銀のDXを推進する際にどのようにリソースを最適化するかを考えることが必要です。

3. リレーションバンキングとデジタルの融合 ― 顧客との関係を維持するために

地方銀行が持つ強みのひとつが、地域密着型の「リレーションバンキング」です。

出典:金融庁資料「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」

デジタル化が進む中で、対面での関係を維持しつつ、どのようにデジタルツールを活用するかが課題となっています。

地方銀行のDXや地銀のDX事例においては、リレーションバンキングを強化するために、オンラインセミナーや地域企業向けのWebコンテンツを提供することが効果的です。これにより、非対面でも顧客との関係を強化し、地域密着型のサービスを継続できます。また、地銀のDX課題を克服するためには、デジタルと従来の対面サービスをどうバランス良く進めるかが鍵となります。

4. 地域ブランドを強化するWeb戦略 ― 地域とのつながりをデジタルで強化

地方銀行のデジタル化事例や金融機関のデジタル化事例が示すように、地域のトップブランドとして認知されるためには、Webを活用した情報発信とブランドイメージの強化が欠かせません。オンラインバンキングや信用金庫Webを提供するだけでなく、地域密着型のコンテンツを定期的にWebサイトで発信することが効果的です。

地域密着型コンテンツ事例

  • 地域企業とのコラボレーションコンテンツをブログ・ニュースで発信
  • SNSを活用した金融セミナーの開催
  • 地域企業のインタビュー記事や地域の業界別の経済動向レポートの発信

地域コミュニティとのデジタル上でのつながりを強化する方法も効果的です。

5. まとめ ― ツールに頼らず、現実に即したデジタル化で地域のトップブランドへ

地方銀行や信用金庫がデジタル化を進める際に重要なのは、単にツールに頼るのではなく、自社の強みやリソースに合った現実的な戦略を立てることです。フィンテックやAIのような高価な技術を無理に導入する必要はありません。まずは、既存の技術やWebツールを活用し、顧客との関係を強化しながら、地域に根ざしたブランド価値を高めていくことが求められます。

本記事で紹介した地方銀行のDX推進のステップや地銀のDX事例を参考にし、限られたリソースの中で、地方銀行としての強みを活かしながら着実にデジタル化を進めてください。

この記事の著者
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九澤 悠
150社以上のWeb支援実績を持つWebマーケティングの専門家。戦略立案から実行支援までを一貫して提供し、BtoCサイトで申込数14.5倍、BtoBサイトで問合せ数12倍、ECサイトで売上378%増などの成果を達成。セブン銀行、東京ガス、三菱地所リアルエステートサービスなど、多様な企業を支援。迅速な対応と現場知見を活かした実践的なサポートが特長。​
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