多くの日本の企業で活用されてきたマネジメント手法のPDCAですが、「もう古い」「時代遅れ」という声があります。実際に日本の高度経済成長期に大きな影響があったPDCAが今何故そのように言われるようになったのでしょう。また、PDCAに代わるマネジメント手法であるPDRサイクルとはどのようなものなのでしょうか。PDCA、PDRを比較しながら解説いたします。

PDCAは実は古い!

組織の生産性向上を図るための品質管理の手法であるPDCA。1950年に品質経営の父と今も称えられているアメリカの統計学者でコンサルタントであったエドワーズ デミング博士によって提唱されました。彼は日本とも非常に関りの深い人物で戦後直後に来日し、彼の考えであるPDCAについて日本の経営者に対し、講義を行っています。この時代の日本の生産現場は日本製品といえば粗悪品といってもいいほど、惨憺たる状況でした。もちろん、海外とは大きく差をつけられています。それが日本製品といえば高品質となったのは、PDCAの影響が大きいとされています。

当時は世界的にも品質管理の重要性を理解している経営者は少なかったのですが、彼の考えを日本の経営者は熱心に学びました。PDCAを導入して成功した最も著名な例はトヨタ自動車で、経営理念にも掲げている「トヨタ生産方式」がそれです。つまり、PDCAとは、日本の高度経済成長を牽引した工場の現場で主に使われていた手法でした。

具体的にPDCAとはどのようなものなのでしょう。PDCAは以下の4つのステップから成り立っています。

Plan(計画)
例えば、営業現場なら「1年で受注率3%アップ」など、具体的な目標を立てる。
Do(実行)
脇道にそれずに計画通りに仕事を進め、その記録を残す。
Check(評価)
目標がどの程度達成できたかを分析。
Action(改善)
どの要因が成功、失敗につながったかを考える。成功の要因は継続し、失敗の要因は捨てる。

より高品質な商品を生産するためには、実際に効果的だったPDCAの手法。何故、今、「PDCAサイクル古い」というワードが出てくるようになったのでしょうか。それには以下の理由が挙げられます。

改善までのサイクルに時間がかかる

PDCAではしっかりとしたプランニングと同時に、評価や改善にも十分な時間をかけていく必要があります。しかし、製造工場の現場とは異なり、現在のIT化が進んだ多くのビジネスモデルではアップグレードなど断続的にサービス提供を行っていくことが少なくありません。そうなると、PDCA古いというよりは、合わないというべきでしょう。

新しいアイデアが生まれにくい

PDCA手法では、実行した業務を評価して改善していくため、前例的になりがちです。前に実行して成功したことをなぞるだけで新しいアイデアの入り込む余地がなくなることも。次々と新しい視点を取り入れる必要のあるビジネスモデルには合っていません。

PDCAを行うのが大変

PDCAを行うには、かなりの時間をそれに割く必要があります。場合によっては、PDCAを行うことが目的のように感じられてしまうこともあるでしょう。効果があれば、それだけの価値はありますが、そうでない場合、逆にいたずらに時間というリソースを失うことになります。

かといって、PDCAは製造現場以外有効ではないというわけではありません。管理者にとっては今行っている業務全体を俯瞰し、見直すことができるので、その点はどんな場合でも役立ちます。

今注目を集めている最新手法が「PDRサイクル」

多くのビジネスモデルにそぐわなくなってきたPDCAに代わるものとして注目されているのが「PDRサイクル」です。経済思想家であり、ハーバードビジネススクールの教授であるリンダ・ヒルが提唱した考え方です。PDRと比較しながら、PDCAについてご説明します。

PDRサイクルとは

PDRはPDCAと同じく、以下のように手法の手順の頭文字です。

PDRのPは、Prep(準備)である

PDCAのPはPlan(計画)のことでした。「不良品率2%未満」といったとても具体的目標のことです。しかし、PDRのPは、Prep(準備)のこと。これから何をしようか、その理由や目的を考えることで、直接的な数字目標ではありません。

リンダ・ヒルはイノベーションを単なる新しいものではなく、斬新であると同時に有用性があるものと定義しています。つまり、その事業はどんな理由があって行われるのか、どのような目的があるのか、その有用性を考えることが第一歩というわけです。

DはDoで実行

PDCAと同じく、PDRのDもDo(実行)を表しています。Pの準備で考えた目的に合わせて具体的な行動を起こします。

RはReviewで評価

PDCAでは、Check(評価)でしたが、PDRではReview(評価)という文字があります。どちらも日本語では評価と訳されてしまいますが、これはどのような違いがあるのでしょうか。

簡単に言うと、Checkはミスがないか、不正がないかを確認することです。例えば工場のラインでどのようなミスが起きたのかを確認するといったこと。目標の達成度を高めるために、マイナスポイントを消していくというニュアンスが強いです。

一方、Reviewはその業務を行った人以外に成果物を見てもらい客観的に評価してもらうこと。依頼されて作った商品をお客様に見てもらうこともレビューといいます。

PDRの優れているところ

PDRの利点をまとめると以下のようになります。

1回のスパンが短い

単純に考えて、PDRはPDCAより1段階少なく、なによりもPが計画ではなく準備であることが大きいです。具体的な目標となると、立ち上げ自体にそれなりに時間がかかります。しかし、1つの目的や理由に基づいてまず始めるのがPDRのスタンスのため、早いスパンで繰り返すことが可能です。

改善も素早くできる

1回のスパンが長いということは、改善点があっても結果的に改善するまで時間がかかります。しかし、PDRでは早い段階で改善点を見つけて、より理想的な形へと近づけます。

目標達成が目的ではないため、改善が進みやすい

PDCAでは具体的な目標があるからこそ、「目標を達成しなかったらどうしよう…」という問題が常にありました。高すぎる目標を設定してしまった場合、なかなか達成できない、場合によっては結局達成できずに終わるということがおきてしまいます。

目標が高すぎて不正を働いてしまうことも。PDRでも必ず理想的な状態になるわけではありません。しかし、改善に比重を置いていますので、何度も繰り返すうちに結果的に早く高い目標を達成していることがあります。

PDRを進める際の注意点

PDRを進めるにあたり注意すべき点は、「PDRでReview(評価)されるのはDo(実行)ではなく、Prep(準備)である」という点です。PDRは「とにかくやってみる」「個々の担当者に任せる」のですが、行動を評価したり、中断したりするとそもそも正しくReview(評価)できません。目的や有用性を重視すべきという考え方が大本にあります。

常にそのことを頭において、Review(評価)が芳しくない結果ならば、Prep(準備)の見直しをしましょう。

PDRサイクルの本質

PDCAは時間がかかってしまうという点で現在では時代遅れとも言われていますが、何故PDRサイクルが時代に合っていると言われているのでしょうか。例えば、他にもマネジメントサイクルとしてOODAループもあります。OODAループでは現状を観察し、意思決定を行う手法です。そのため、効果はリーダーになる人の個人的な技量次第になってしまい、どの組織でも誰でもというわけにはいかず汎用性がないという欠点があります。

しかし、PDRサイクルの場合、組織はもちろん、個人でも使いやすい手法です。また、どんな活動にも誰であっても可能性があり、Prep(準備)を追求すればイノベーションを生み出せるという考えでもあります。そのため、大きな事業においてももちろん有効ですが、小さなことでも使えます。

とても手軽に書くと、「毎日のルーチンである掃除の時間を短縮して趣味の時間を楽しみたい」と思ったとき、掃除の手順を変えたり、道具を変えたりして、その結果、どうなったかをみる。手順を変えたことより道具を変えたことが良かった、あるいは両方変えたら良かったというふうにレビューします。

PDRサイクルは、このように実行するのにハードルがとても低く、どのようなビジネスにも使いやすいことが評価されているポイントと考えられます。

まとめ

PDCAは古いと言われていますが、現在でも品質を重視し、長いスパンで作り上げていくビジネスには有効です。ただ現在の多くのビジネスモデルに合致しやすいのはスピーディーで汎用性のあるPDRといえます。

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